日本対ロシア戦 観戦記
もうあれから20年が経った。日本で開催するのだから
絶対現場でみたい。そのためいろんな方法で切符の手配
をしたが、全部だめだった。唯一兄が、サウジアラビア戦
の抽選に当たり埼スタで行われる試合を見ることができた。
試合前に浦和美園駅に行って、来る人に向かって、
切符はないか叫んだ。しかし、だめだった。
そして、ロシア戦。だめかもしれないが、横浜スタジアム
まで、朝から出かけた。横浜の駅に降りると駅がＷ杯一色
であった。駅から降りる人がみんな日本代表のユニホーム
を着ている。一瞬南米の試合前の様子と重なった。
スタジアムまでの道に警官が配備されている。
なんと女性警官のバックには、日本代表ユニホームを
着ているペコちゃんがぶら下がっていた。
『切符売ってください』のプラカードをあげる。
おまけにＷ杯記念コインをつけますと添えておいた。
懐には20万円と記念コインが入っている。朝10時から
立ち続ける。目の前をユニホームを着たチケットを
持っているだろう幸運な人たちが通りすぎる。
私と同じプラカードを手にした人も大勢立っている。
時々プラカードを持った女性などは声をかけられて、
交渉していることもあった。私には誰も話しかけてさえ
くれない。試合開始は19時である。立ったまま昼を食べ
8時間が過ぎた。まわりでプラカードを持った人たちが
諦めて喫茶店などでテレビ中継を見るためか、少しづつ
減っていく。6時30分。試合開始まであと30分。
もうだめかと思い出した。次の瞬間、１人の男の人に
声をかけられた。1枚あるけどいくらなら買ってくれる。
私は、ドキドキしながら10万円と言った。彼は少し
ためらっている。実はネットで1枚20万円で買ったのだが
相手が来れなくなったと本音で言ってくれた。私は、ぎり
ぎりで12万円ならだせるというと少し悩んで、
じゃこれをといってチケットをくれた。もちろん即、現金
と記念コインを渡して、結局一緒に行くことになった。
ああ，神様ありがとう。スタジアムに入った途端、
こんなにすごいことになっているとは思わなかった。
6万人が全員日本代表のユニホームを着て叫んでいる。
異様な雰囲気であった。キックオフ。応援の渦が巻く
そして運命の稲本のゴール。決まった瞬間スタジアム
が揺れた。回りにいる人誰か彼れ待わず抱き合った。
地鳴りのような声が響きわたった。感動で鳥肌が立った。
そして終了のホイッスル。日本が勝った。Ｗ杯で初めて。
もう全員が興奮していた。スタジアムを出ても万歳や
拍手の渦であった。警備に当たっている警官とも抱き合い
ハイタッチしている。そうサッカーの神はいるのだ。
もちろんユニホームのまま電車にのって新宿に着いた
反対側のホームの電車もユニホームで満杯。彼らは国立
競技場のパブリックビューイングの人たちだ。
彼らのあの人たちはきっとスタジアムでみたんだと
いう羨望の眼差しがうれしかった。
我がサッカー人生最良の日であった。
