『護られなかった者たちへ』
生活保護をテーマに真正面から取り組んだミステリー。重厚な物語であるが、現代の問題に切り込んでなおかつ物語の展開にどんどん引き込まれていく。どんでん返しの中里らしく。ラストも良かった。私の今年のベスト1だといえる
『嘘』
読んでいて苦しくなる展開。互いに暗い過去をもつ縁のない親と子が不思議な運命で出会う。物語は不安定な幸せの中で進む。そしてついに決定的な事件が起きる。刑期を終えて最後には幸せをつかむ。最終章はいらないのではと思った最後の『嘘』で痺れた
『正義の行方』
オーディブルを利用したのだが、最初は、レポートを読み上げるような無味乾燥な調子で違和感があった。しかし、内容が進むにつれ、それが現実の重みを伝えることがわかる。それぞれの立場での発言を冷静に綴っていく。真実は一つである。でも正義とはそれぞれの立場であるものだろうか。時代背景や警察の思惑、現場の声。記者たちの矜持、被害者家族たちの嘆き、積み重なって重い事実と向き合う。真実は神のみぞ知る。人間はいくら高度な道具や知識を使っても到達できないのだろう。
『存在のすべてを』
タイトルからして哲学的な小説なのかと思って読んだら、サスペンス調で始まり、家族の愛や警察内部、美術界まで発展する。点が線となりスリリングな展開が一点ハートフルで最後は泣けてしまった。貴彦と亮の作品を見てみたくなった。でも貴彦はどうなってしまったのだろう。こんなに優しくて切ない終わりかたがあるだろうか。タイトルが存在のすべてを語っていた。
『正義の申し子』
ヤッホーおもしれー。ユーチューバーのジョンの乗りがいいね。鉄平の関西弁もいいし、いつの間にか好きになってしまった。振り込め詐欺とユーチューバー、女子高生に金持ち坊ちゃんの悪の医学生たち、まさに現代のテーマを盛りだくさんにいれて、展開がコロコロ変わり、ハラハラしたり、大笑いしたりして、そして最後は、素敵な終わり方だった

『未明の砦』
重いけど心に響く作品。こんな残酷な物語は決して誇張じゃない。家から少し先の工場群は文字通りあの大手の車製造工場群がある。体調不良で休みの電話をした工員の話を長引かせ、そのうちに車で迎えに行き仕事につかせたなんて話をきいたこともある。確かに親戚や周りの人も会社の関係者だ。そして、派遣という労働形態がそれを助長されているのだ。最近でも車業界が下請けに経費や在庫を持たせているという実態が報道された。現代の暗部を描き、なおわずかな希望も見えたストーリー。堪能させていただきました。

『まいまいつぶろ』
あの八代将軍吉宗の子が、不遇の生まれとは知らなかった。その後の九代将軍家重となれたのも忠義の大岡忠光がいたからであった。そして大岡越前との親者とは奇遇である。それぞれが運命に導かれ遇い、歴史が動いていく。将軍と通詞という間柄を超えた。熱い物語、涙無くしては語れない。