多趣味の扉

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大学入試 予言者 試験官登場

かなり前の大学入試の話である

受験するS大は、家から遠く、

電車を長い時間乗らなければいけなかった。

その頃、混雑した急行電車が、乗れず、

各駅停車で試験会場に行くのだが、

いつも以上に時間がかかってしまった。

その大学は、駅からも遠く、最期は長い坂が

待っていた。最寄り駅に着いたのは試験開始の

10分前。開始時間が迫るなかで、駆けに駆けた

走り続けて、試験会場に飛び込む形で入る。

なんと会場の席は,運悪く一番前の中央。

そろそろ解答用紙を配ろうと言う

タイミングであった。

なんとか席に着いたが、年老いた試験官が

目の端で非難するまなざしを向けたのがわかった。

試験が開始されても、会場まで走ってきたのと、

恥ずかしい気持ちでまったく問題が頭に入らず、

ふらふらの状態で最初の試験が終わった。

解答用紙を後ろから回収され、私の所に集まった。

例の年配の試験官が集まった答案用紙を回収した。

休み時間となり、外で頭を冷やそうと歩いていると

あの年配の試験官が前から歩いて来るではないか。

近づくと私の前で止まり、いきなり指さして

こう言い放った。

「君、落ちるよ」「え、なに」。私は凍りつく

一瞬、脳裏にいろんな思いが浮かぶ、

「遅れてきたから」

「名前を書かなかったから」

「なにか失礼なこととをしたのか。」

「それとも彼は予言者なのか。」

「もう落ちることが決まってしまったのか。」

私は、きっと青ざめたのかもしれない。

その試験官は、慌ててそれ、それといって、

私の腰のあたりを示した。

私は、当時流行のトレンチコートを着ていたのだ。

そしてコートのベルトが落ちそうになっていた。

それを親切に教えてくれたのだ。

でもね、受験生に向かって「落ちるよ」ないよな。

せめて、主語を入れて注意して欲しかった。

後日、その試験官は、本当に予言者だったのだ。

見事に的中して、私の桜は散ったのであった。