多趣味の扉

好きなことを話そう

幻のハムカツを求めて

カツよりハムカツなのだ

私のハムカツは、それは悲しいというか

懐かしいと記憶とともにある。

母が早くに亡くなって、父と中学生の兄と

小学生の私が3人で暮らしていた頃だ。

父の仕事の関係で、3ヶ月間ほど兄と私が

2人で生活することになった。

そのときだけ、身の回りの世話をする

おばあさんがやってきた。

頭はボサボサの半分白髪の髪を無造作に

束ねていた。痩せてしわしわだった。

へへへと笑らって口を開けると前歯が

一本欠けていた。

そして、その行動がすごい。汚れた靴

と洋服を一緒に洗濯機にかける。

卵焼きは、砂が混ざっていたときも

あった。決定的に飯がまずかった。

人柄は悪くないのだが、今から考えると

軽い痴呆症だったのではないかと思う。

そんなかで、兄と私は1日100円ずつ

もらって、近所の店でガーナチョコ

とハムカツを買ってよく食べていた。

赤く薄いハムにこれまた薄い衣が

ついていた。しかし最高にうまかった。

そして、今欲しいものは大抵手に入る

しかし、その薄っぺらなハムカツはない

ハムカツはあるが、みんな元気で太い

ハムに分厚い衣を包んで売っている。

違うんだ、あの薄くて赤いハムが食べ

たい。あの懐かしい味を求めている。

こんな上品ではないが近い